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※本記事は、弁護士 藤垣圭介(藤垣法律事務所)の監修を受けています。
借金の返済がどうしても難しくなったとき、「自己破産」という選択肢を検討したことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。自己破産というと、「すべてを失う」「人生が終わる」といったイメージを持たれることもありますが、実際には再スタートを切るための大切な制度でもあります。
この記事では、自己破産とは何か、その種類、手続きの流れ、そしてメリット・デメリットまで、わかりやすく解説していきます。
目次
自己破産とは?
自己破産とは、借金などの債務を返済できなくなった個人が、裁判所に申し立てを行い、「支払い不能」と認められた場合に、法律に基づいて借金の返済義務が免除される手続きのことです。
この制度は、破産法という法律によって定められており、生活を立て直すための再出発の機会を与えることが目的とされています。そのため、返済が難しい状況で、今後の生活の見通しが立たない方にとって、大きなサポートになるわけです。
自己破産の種類(手続きの分類)
一言で自己破産と言っても、その手続きには、主に以下の3つの種類があります。
同時廃止事件 | 財産がほとんどなく、配当すべき資産がないと判断された場合に選ばれる手続きです。破産管財人が選任されることはなく、比較的スムーズに進行します。 |
---|---|
管財事件 | 20万円を超える財産がある場合などに該当します。破産管財人が選任され、財産の調査・処分・債権者への配当などが行われます。その分、手続きや費用の負担は増える傾向にあります。 |
少額管財事件 | 通常の管財事件よりも簡易化された手続きで、東京地裁など一部の裁判所で導入されています。費用が抑えられ、期間も短縮されるため、実務上多く用いられています。 |
自己破産をする人は元々財産を持っていないケースが多いので、全国的には同時廃止事件になるケースが多い(6割ほど)です。
しかし、東京地裁では、管財事件が適用される基準が低く、少額管財事件では費用を安く抑えられるため、同時廃止事件より少額管財事件の割合が多くなるなど、管轄の地方裁判所によって割合は前後します。
自己破産の解決事例
自己破産については、以下のような解決事例があります。
Cさん(55歳・会社経営の場合)
借金 | 毎月の支払い | 金利 | |
---|---|---|---|
自己破産前 | 2600万円 | 63万円 | 13~15% |
自己破産後 | 0万円 | 0万円 | 0% |
Gさん(37歳・会社員の場合)
借金 | 毎月の支払い | 金利 | |
---|---|---|---|
自己破産前 | 270万円 | 10万円 | 13~15% |
自己破産後 | 0万円 | 0万円 | 0% |
自己破産は文字通り借金をすべてリセットできるため、効果は絶大だと言えますよね。
自己破産のメリット
次に、自己破産をすることによって得られるメリットについてお伝えしていきます。
すべての借金が免除される
自己破産の最大のメリットは、やはり、すべての借金の支払いが免除されるという点だと言えます。任意整理や個人再生など、他の種類の債務整理では、借金が減ることはあっても、過払い金が発生しない限り、チャラになることはほとんどありません。そのため、失業中などで収入がない人であれば、任意整理や個人再生を行うことは難しくなってしまいます。
しかし、自己破産だけは原則、借金をゼロにできるので、働くことができない人であっても、手続きを行うことが可能なのです。
債権者からの取り立てが止まる
弁護士に依頼して受任通知を送ると、債権者からの取り立てや電話、郵便での督促がすぐにストップします。精神的に追い詰められていた方にとっては、これだけでも大きな安心につながりますよね。
財産の一部は手元に残せる
自己破産をすると身ぐるみすべてを剥がされるのではないかと勘違いしている人も中にはいますが、自己破産をしても、すべての財産を失うわけではありません。例えば、基本的に99万円以下の現金や生活に必要な家具、衣類などは手元に残せます(裁判所によって基準は変わります)。
最低限の生活を守るための配慮はなされているので、その点ではご安心ください。
給与や財産の差押えが中止される
破産手続き中は、給与や口座の差押えなども中止されます。そのため、返済ができず、裁判上の手続きが進んでしまっている人にとって自己破産は非常に有効な手段となります。
自己破産をすることで、経済的な再建のための足がかりができる可能性はグッと高くなるでしょう。
人生の再スタートが切れる
借金のプレッシャーから解放され、再スタートを切ることができます。「もう一度やり直したい」と願う方にとって、自己破産は文字通りゼロからの再出発ができる手続きとなり得るのです。
自己破産のデメリット
一方で、自己破産には無視できないデメリットもあるので、手続きを検討している人は必ず事前に理解しておいてください。
一定以上の財産を手放す必要がある
自己破産をすると以下のような厳しい条件が課されます。
- 20万円を超える財産は処分しなければならない
- 99万円を超える現金は所有できない
※管轄の裁判所によって基準が異なる場合があります。
また、住宅ローンや車のローンが残っていれば、基本的には家やマイカーを失うことになります。これは債権者への配当に充てられるためです。
そういった意味で、借金からすべて解放される代償は少なくないと言えるでしょう。
官報に記載される
自己破産をすると国が発行する機関紙である官報に名前や住所などが記載されてしまいます。官報は一般の人が普通見るものではないため、そこまで心配をする必要はありません。ただ、官報に自分の情報が記載されるという事実だけは知っておいた方が良いです。
免責が決定されるまで制限される資格や職業がある
自己破産の申し立てをしてから、免責が許可されるまでの間、制限される資格や職業があります。例えば、弁護士、司法書士、税理士、公認会計士、旅行業務取扱管理者、警備員、宅地建物取引業、質屋、貸金業者などの職業には就くことができません。
免責が許可されれば、制限は解除されますが、一時的に制限されるだけでも困るケースはやはり出てくるかと思います。そういった点から、自己破産の手続きをする場合は、自分の資格や職業が制限事項に含まれていないか事前にチェックしておいてください。
信用情報に事故情報が記録される
自己破産の手続きを行った場合は、信用情報機関に自己破産をした情報が記録され、いわゆるブラックリストに載った状態になってしまいます。自己破産だと、約10年間と債務整理の手続きの中では、最も長く記録が残ってしまうのです。
そして、この期間は、新たな借入をすることができません。ローンを組んだり、クレジットカードを作ったりすることが、できなくなってしまうため、自己破産後は、当面、借金をしないように気を付けましょう。
保証人がいる場合、その人に返済義務が移る
保証人付きの借金がある場合、自己破産をすることで、その返済義務が保証人に移ることになります。
例えば、奨学金の返済が残っていて、かつ親が連帯保証人になっている場合は、親が残債の返済義務を背負うことになるのです。それによって家族や知人に迷惑をかけるリスクがあるため、事前の話し合いが重要となってくるでしょう。
住所移転や旅行の制限がある
自己破産の申し立てをすると、免責が許可されるまで、住所移転や旅行の制限を受けるようになります。これは、債務者が自己破産の期間中に移転や旅行をした際に、逃げたり、誰も分からないところで財産を隠したりするのを防ぐためだとも言えます。
ただ、住所移転や旅行の制限は完全に禁止されるわけではなく、事前に申請をすれば許可を受けることも可能です。また、免責が許可された後は、もちろん、制限が解除されます。
借金の理由によっては免責されにくい場合がある
自己破産では、借金をすべてチャラにできますが、その分、なぜ借金を作ってしまったのかという理由は厳しく追及されます。例えば、パチンコなどのギャンブルが借金の理由になっていると、免責不許可事由に該当する場合があり、そうなると免責されるのが難しくなってしまいます。
(ただしギャンブルでの借金の割合がそれほど多くなければ、免責不許可事由には該当しない場合もあります。)
一応、免責不許可事由に該当しても、ほとんどのケースでは、裁判所から裁量免責という形で免責を許可されている実情があります。ただ、それでも免責不許可事由に該当すれば、手続きが複雑になるのでご注意ください。
自己破産ができる条件とできないケース
自己破産をすれば原則すべての借金が免責されると聞けば、「借金の返済が厳しくてもいざとなれば自己破産でチャラにすれば良いではないか?」と思う人がいるかもしれません。
しかし、自己破産は誰でもできる手続きではありません。そのため、以下の条件は事前に把握しておくようにしましょう。
自己破産できる人 | 自己破産できないケース |
---|---|
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自己破産の流れ
自己破産の手続きは以下のようなステップで進んでいきます。
- 弁護士への相談・依頼
- 受任通知送付(債権者への取立て停止)
- 必要書類の準備・提出
- 裁判所への申立て
- 破産手続開始決定
- 管財事件の場合、財産調査
- 免責審尋
- 免責許可決定
- 官報への掲載(2回)
全体としては数ヶ月から半年程度かかるのが一般的です。詳細はこちらのページをご確認ください。
自己破産にかかる費用
自己破産の費用は手続きの種類や依頼先によって異なりますが、弁護士に依頼する場合はおおよそ以下が目安です。
- 同時廃止事件:20万円~30万円前後
- 管財事件:50万円前後(管財人報酬含む)
詳細は以下のページをご確認ください。
なお、収入が少ない方は「法テラス」を通じた費用立替制度を利用することも可能です。
よくある質問(FAQ)
まとめ
借金が膨らみ、生活に支障をきたしている場合、自己破産という選択肢を避けずに、現実的な対応をとることが大切です。もちろん、デメリットもありますが、それを上回るメリットがあるのも事実です。何より大切なのは、これからの人生をどう立て直していくか、という視点です。
そういった観点から、どういった方法がベストか判断することをおすすめいたします。

自己破産については、世間で言われている誤解をあまり信じずに、弁護士などに相談して、正しい情報を入手するようにしてくださいね。
監修者のコメント
藤垣法律事務所の藤垣圭介弁護士からの監修コメントです。

自己破産は、プラスの財産とマイナスの財産を一通り清算して、生活の再スタートを図るための手続です。借金の返済見込みが全くない場合には、自己破産を通じて財産関係をリセットすることが非常に有力と言えます。
自己破産を専門家に依頼する際には一定の費用が発生しますが、依頼後に専門家から受任通知を送ってもらえば、債権者からの取り立てが止まった後、無理なく費用の支払いを進めることが可能です。同時廃止となる場合には、弁護士や司法書士に依頼することで比較的短期間での円滑な解決が見込めるでしょう。
また、管財事件では、依頼の費用が高くなりやすいですが、弁護士に依頼した場合のみ少額管財事件となり、裁判所への支払いを安く抑えられるため、トータルの負担は弁護士に依頼した方が小さくなる傾向にあります。