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※本記事は、弁護士 藤垣圭介(藤垣法律事務所)の監修を受けています。
「借金が返せない」「利息ばかり払っていて元本が全然減らない」「でも自己破産をするとマイホームを手放さないといけなくなるかもしれない。」そんな悩みを抱えていませんか?
そんなときに検討できる選択肢のひとつが「個人再生」という債務整理手続きです。個人再生は、裁判所を通じて借金を大幅に減額し、原則3年(場合によっては5年)で分割返済していく制度です。
この記事では、個人再生とはどんな制度なのか、どんなメリット・デメリットがあるのか、さらには他の債務整理手続きとの違いや、実際にどんな人が向いているのかについて、できるだけわかりやすく解説していきます。
目次
個人再生とは?
個人再生とは、民事再生法に基づいて行う裁判所を通じた債務整理手続きです。簡単に言うと、「借金を大幅に減額してもらい、それを数年かけて分割で返済する」ことができる制度なんですね。
そして、個人再生で特徴的なのは、「住宅ローン特則」があるため、マイホームを残しながら手続きができることです。あと、借金の理由に制限がなく、ギャンブルや浪費が原因であっても問題なく利用できます。ここら辺が自己破産と大きく違うところです。
個人再生の手続きには大きく分けて以下の2種類があります。
- 小規模個人再生:債権者の多数決で再生計画を認可するかどうかが決まる
- 給与所得者等再生:収入が安定している給与所得者が対象で、債権者の同意が不要
実際には、借金をより多く減らせる小規模個人再生が選ばれることが多いです。また、個人再生は書類作成や手続きが非常に複雑なため、基本的には弁護士や司法書士に依頼して進めることが一般的です。
個人再生の解決事例
では実際に個人再生を利用したことで、どれだけ借金が減ったのか、事例を見てみましょう。
Bさん(35歳・会社員の場合)
借金 | 毎月の支払 | 金利 | |
---|---|---|---|
個人再生前 | 670万円 | 12万円 | 13~15% |
個人再生後 | 180万円 | 4万円 | 0% |
約500万円の借金が圧縮され、毎月の返済額も3分の1に。これだけでも生活の負担は大きく変わりますよね。
Eさん(37歳・会社員の場合)借金 | 毎月の支払 | 金利 | |
---|---|---|---|
個人再生前 | 600万円 | 10万円 | 13~15% |
個人再生後 | 120万円 | 2.8万円 | 0% |
こういった事例を見ると、個人再生では、借金がチャラになるとまではいかなくても、かなり圧縮できることがお分かりいただけるのではないかと思います。
個人再生のメリット
ここからは、個人再生の代表的なメリットについてお伝えしていきます。
借金の元本を大きく減らせる
個人再生は自己破産のように借金をゼロにできるわけではありません。しかし、任意整理に比べて、より大きく借金を減額できるというメリットがあります。
個人再生では債務の総額に応じて最低弁済額(最低限払うべき額)が定められており、その額は以下のようになっています。
債務の額 | 最低弁済額 |
---|---|
100万円以下 | 全額 |
100万円以上500万円以下 | 100万円 |
500万円以上1,500万以下 | 5分の1 |
1,500万円以上3,000万円以下 | 300万円 |
3,000万円以上5,000万円以下 | 10分の1 |
- 借金の総額が5,000万円を超えると個人再生を行うことはできません。
- もし、清算価値(手持ちの財産をすべて現金に換価した場合の額)が最低弁済額を上回る場合は、そちらが弁済額となります。
- 給与所得者等再生の場合、可処分所得(給与の80%程度)の2年分が最低弁済額を上回る時は、そちらが弁済額となります。
実際、借金が100万円以下の場合は、借金自体を減らすことはできないので、個人再生を行う意味は薄れてしまいます。しかし、借金が200万、300万円を超えるレベルになってくると、個人再生を行うメリットは大きくなっていくんですね。
住宅ローン特則で自宅を守れる
自己破産の場合は、すべての財産が整理の対象となるため、もし住宅ローンが残っていたら、住宅を手放さなければならない結果となってしまいます。しかし、個人再生には「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」があり、条件を満たせば家を残したまま借金を整理することができるのです。
自己破産のように借金がゼロになることはありませんが、その代わり、マイホームや家族との生活を守りながら借金問題に取り組めるのが個人再生の大きな魅力の一つだと言えるでしょう。
ギャンブルや浪費が原因でも利用可能
自己破産は免責不許可事由があるため、ギャンブルや浪費が原因の借金では利用が難しくなるケースがあります。しかし、個人再生にはそういった制限がありません。
そのため、借金の原因が何であれ、再生計画が認可されれば手続きは可能です。
職業や資格への制限がない
自己破産とは異なり、個人再生では職業制限や資格制限がありません。たとえば、保険外交員や士業、警備員など、破産では制限を受ける職業でも、個人再生であれば続けることができます。
こういった点からも個人再生の手続きは自己破産に比べて融通が利きやすいと言えますよね。
勤務先にバレるリスクが低い
個人再生をしても、基本的に会社に通知が行くことはありません。個人再生の手続きは、債権者や裁判所とのやり取りで進み、勤務先に通知が行くことは通常ありえないからです。そのため、自分から勤務先に伝えない限り、勤務先にバレることはないのです。
ただし、一部の条件下ではバレるケースがあるので、詳細は相談先の弁護士に確認するようにしてください。
個人再生のデメリット
一方、個人再生には以下のようなデメリットがあります。
信用情報に傷がつく(いわゆるブラックリスト)
個人再生を行った場合も他の債務整理の手続きを行った時と同様、信用情報機関に債務整理を行なったことが事故情報として記載されてしまいます。いわゆるブラックリスト状態になるわけです。
信用情報機関に事故情報が登録されると、5年~10年はその記録が残り続けるため、記録が消えるまでは、新たな借入れ(ローン)をしたり、クレジットカードを作成したりするのが難しくなってしまいます。
信用回復には時間がかかるため、この点は大きな注意点です。
減額後の借金も返済が必要
個人再生では任意整理に比べて、借金の減額幅が大きいというメリットがあります。しかし、借金が減ったとはいえ、残った金額は原則3年(場合により5年)で返済していかなければなりません。
そのため、継続的な収入が求められます。無職であったり、将来の収入に不安がある方は手続きが認められない可能性もあるのでご注意ください。
住宅ローン以外の債務はすべて整理の対象となる
個人再生は住宅ローンを整理の対象から外すことができますが、住宅ローン以外の債務はすべて整理の対象にしなければなりません。
そのため、奨学金など、もし保証人がついている借金があれば、整理の対象となり、保証人に迷惑がかかってしまいます。
また、車のローンが残っている場合は、個人再生を行なうことによって、マイカーを失う可能性が高くなります。
税金・養育費・罰金は減額対象外
個人再生で減らせるのは民間の借金(カードローン、キャッシングなど)です。税金や養育費、罰金などは減額の対象になりません。
これらの支払いが残る場合は、別途返済していく必要があります。
官報に掲載される
個人再生を行うと、官報に3回にわたって名前と住所が掲載されます。これは国が手続きの透明性を担保するためのもので、法律上の義務となっているため、避けることはできません。
ただし、官報を読む一般人はほとんどいないため、プライバシーが完全に失われるというわけではありません。そういった点ではあまり心配をしなくても大丈夫です。
手続きが複雑
個人再生は、他の債務整理の手続きに比べて、裁判所への提出書類が最も多い為、その分、手続きが複雑かつ長期化してしまうというデメリットがあります。
下手に個人でやったら廃止や不認可になってしまう可能性が出てくるかもしれないので、必ず法律の専門家を通じて行うようにしてください。
また、手続きが複雑である分、費用もかさむようになり、弁護士に依頼した場合は40~70万円、司法書士に依頼した場合は40~50万円ぐらい掛かってしまいます。
官報に個人情報が記載されてしまう
個人再生を行った場合は、その手続きのプロセスの中で、官報という国が発行する機関誌に名前や住所が3回にわたって掲載されてしまいます。
官報は一般の人が見ることはまずないのですが、記録自体はずっと残ってしまうものなので、事前に理解しておく必要があります。
手続きが複雑で時間と費用がかかる
個人再生は債務整理の中でも特に手続きが煩雑で、必要な書類も多く、専門知識が求められます。
弁護士に依頼した場合は40〜70万円程度、司法書士でも40〜50万円程度の費用がかかるのが一般的です。また、再生委員がつくとさらに費用が増加する場合もあるので、事前にどれくらいの費用がかかるのかは必ず把握しておきましょう。
個人再生が向いている人の特徴
上記の点を踏まえて個人再生に向いている人の特徴をまとめると以下のようになります。
- 借金が200万円以上ある
- 安定した収入があり、今後も返済を継続できる
- 自宅を手放したくない(住宅ローンがある)
- ギャンブルや浪費が原因で借金が膨らんだ
- 資格や職業に制限をかけたくない
- 会社や家族に知られずに借金整理を進めたい
簡単に言うと、借金が自己破産をしてもおかしくないほど膨らんでしまったけれども、安定した収入があり、マイホームを失いたくないという方に個人再生の手続きはおすすめです。
任意整理・自己破産との違い【比較表】
個人再生が任意整理や自己破産とどう違うか、表にまとめてご参考にしてください。
項目 | 個人再生 | 任意整理 | 自己破産 |
---|---|---|---|
借金の減額幅 | 5分の1〜10分の1 | 利息のみカット | 原則全額免除 |
マイホームの扱い | 条件付きで守れる | 基本的に影響なし | 手放す必要あり |
職業・資格制限 | なし | なし | 一部制限あり |
官報掲載 | あり | なし | あり |
手続きの難易度 | 高い | 比較的簡単 | やや複雑 |
信用情報への影響 | 5〜10年 | 約5年 | 5〜10年 |
この表を見て、「自己破産まではしたくないけど、任意整理では足りない…」という方には、個人再生がちょうどよい選択肢になることがわかるかと思います。
個人再生の手続きの流れ
個人再生の手続きの流れは以下のようになっています。
- 弁護士または司法書士へ相談
- 借金状況や家計の確認、必要書類の準備
- 裁判所に申し立て
- 再生計画案の提出
- 裁判所が再生計画を認可
- 分割で返済開始
全体の期間は4~6か月程度が一般的です。詳細は以下のページをご覧ください。
よくある質問(FAQ)
まとめ
個人再生は、借金を大幅に減額しながらも、マイホームや仕事を守れる制度です。任意整理では効果が足りないけれど、自己破産には抵抗があるという方には、非常に有効な選択肢と言えるでしょう。
そのような点からも個人再生は、任意整理と自己破産の中間のような位置づけになっていると言えます。
ただし、手続きには時間も費用もかかり、返済継続の見込みも必要となるため、誰にとっても最適とは限りません。自分に合った債務整理の方法を見つけるには、まずは専門家に相談してみることが第一歩です。

借金の事情によって、個人再生が良い時もあれば、そうではない場合もありますので、一度、弁護士に相談されることをおすすめいたします。
監修者のコメント
藤垣法律事務所の藤垣圭介弁護士からの監修コメントです。

個人再生は、借金を大幅に圧縮した上で、計画的に返済を続けながら経済的再建を図る手続です。特に、住宅ローンが残っている場合、自宅を失わず実施できる債務整理である、という点に大きなメリットがあります。
もっとも、手続は長期に渡りやすく、内容も複雑多岐に渡るため、自身で行うことは現実的でありません。個人再生に長けた弁護士や司法書士に依頼し、書類の準備や申立の手続を進めることが適切でしょう。
また、個人再生では具体的な再生計画を立てることになるため、安定した収入の見込みなど一定の条件がなければ利用することができません。個人再生が利用できる状況かを正しく判断するためにも、まずは専門家への相談を行ってみましょう。